実話 所謂ひとつのノンフィクション


「ソレ」が自分の視界に入ってきたのは五月七日、


自分の通う高等学校への通学途中でした。。。




「ソレ」は切り倒された丸太だったでしょうか。。。


はたまた、「ソレ」は


GWを良いことに何処ぞの円満な家庭が少し早いクリスマスパーティーを行った時に捨てられた


不覚にも焦がしてしまったローストチキンだったでしょうか。。。




なにしろ登校途中、


遅刻しまいと思い自転車のギアを最大レヴェル4段に設定して走行していましたから、


道端に置かれていた「ソレ」は如何せんスグに自分の視界から姿を消しました。。。




(多分、骨の突起のようなモノが生えていたからローストチキンだろう、


この時期からローストチキンとは豪勢な家庭もあったもんだ)





などと、さして取りとめもないことだったので、


自分は「ソレ」を焦げたローストチキンということで納得して登校を急ぎました。。。






そして学校。。。




学校では、


メガネを忘れたり、自分の唯一の昼食であるコアラのマーチを友人に掻っ攫われるなど良くない事が


多々起こりました。。。


友人から借りた教科書を忘れる、などではなく、


不思議と自分にしか迷惑の掛からない事ばかりでした。。。


もうこれは、


自分にはどこかの道路で交通事故を起こして死んだ黒猫の霊でも取り付いてるんじゃないかと


疑心暗鬼を起こすほどでした。。。





授業も終わり結局自分は暗澹たる気持ちで学校を出ました。。。





しかし、ふと、今朝視界に映った「ソレ」の存在を思い出し、


もう一度良く見てみようと思い帰路は登校時と同じ道を辿ろうという考えに達しました。。。










朝は急いでいても学校までの道のりかなりの時間を要しているように感じますが、


帰りはさして急いでもいないのに


朝よりは早く進んでいるように感じるのは一体どういう心理作用が働いているのでしょう。。。





今朝「ソレ」を発見した道に到着。。。



ギアのレヴェルを1にし自転車の速度を落とす自分。。。



するとスグに再び自分の視界に姿を現した「ソレ」。。。







自転車を止め「ソレ」を見た途端、


自分は、今日の学校での出来事が全て納得に変わりました。。。


そして自分は静かに手を合わせました。。。






今朝、焦げたローストチキンだと思っていた


「ソレ」は、


恐らく交通事故で死んでしまったのであろう、






「黒猫」だったのです。。。



今朝骨だと思っていた突起は「黒猫」の前足、後ろ足のようでした。。。






「黒猫」は昨日の雨の影響か体がぐっしょりと濡れ、仰向けになって静かに呼吸を止めていました。。。