あーたのし



 太陽が燦々と輝くさわやか三組な空の下で、突然さーっと降り始めてはふと止んでしまう雨のことを『お天気雨』と呼ぶのは周知の事実、


誰もが知っていることだろうと思うけど、それじゃあ果たしてこのお天気雨という言葉の起源、つまりは語源を知っているかと問いた場合、


一体全体どれだけの数の人がイエスと答えられるかと予想したら、そんなヤツ殆どいやしないんじゃないかとボクは思うんだよね。



 何せお天気雨という言葉の語源は今から遥か1200年前、平安時代にまで遡るんだからこれが。



 平安時代って言やぁ、京の都に魑魅魍魎が跋扈、そりゃもう今で言うケータイ持ったクソガキゆとりくらい沢山沸いていたわけだけどさ、


その中でも特に人間にとって近しい存在だった魍魎がいたんだよ。


それは何か、そう、「狐」だ。



 今でも「狐につままれたよう」なんて慣用表現があったり、


かの有名な漫画雑誌である週刊少年ジャンプに連載されている「ぬらりひょんの孫」では、


京妖怪の親玉として、色白で黒髪ロングな女子高生に扮した「羽衣狐」なんてキャラが登場しているけど、


まあこのように狐っていうのは今も昔も我々人間にとって動物でありながらどこか妖し染みた対象として見られてきたわけだ。



 さてはてしかし、単に狐=妖怪と言ってもさまざまな種類がいるのをご存知だろうか。



 まず最も一般的なものとして挙げられるのが妖狐だ。


妖狐とはその名の通り妖術を使う狐で、先ほど挙げた慣用句に使われている狐というのも、この妖狐のことを言っているんだ。


妖狐は妖術で人を化かすだけの極力害の少ない狐だと言われているけど、


個体によってはかなり悪質な化かし方をしてたヤツもいたという情報が、ボクの持っている文献に残っているよ。


そうだ、小学校の頃「てぶくろをかいに」って絵本を読んだことあるかな。


親狐が子狐の手を妖術で人間のそれに変えて手袋を買いに行かせる話。


あれに出てたヤツらなんかはかなり悪質な部類に入るだろうね。


お金だって白銅貨二枚を持ってとか書かれてたけどあの悪妖狐どものことだ、きっと葉っぱを偽装して作ったに違いないよ。


全く、ボクはどうしてあの本が小学校低学年の推薦図書に指定されているのか、未だに理解出来ないよ。



 さて、次は九尾の狐だ。



 九尾の狐はヤバイ、まじ凄いヤバイ。


こいつも名は体を表すってことで九本の尻尾を持っているんだけど、


それに加えて炎を操り人を炭火焼にして食べてしまうという、傍若無人残酷無比な一面を備えていたという狐だ。


体長も東京タワー並みにでかくて、昔九尾の狐によって滅ぼされそうになった国もあるくらいだよ。


ちなみにコイツを倒すには九本の尻尾の中にある本物の尻尾一本を切り落して、それを金髪の少年の腹に封印するしか方法がないらしいよ、


文献の情報によると。


あと九尾の狐は炭火焼にした人間のハツが好物で、焼肉屋へ行ってもよく注文してたんだって。


もちろんこれも文献に書かれていたことだけどね。



 よし、それじゃあ最後は「天狐」について紹介しよう。


天狐というのは聞いたことない人が多いと思うけど、


京の時代では神と同格化され、人間たちから「御天狐様」とまで呼ばれていた、最も神聖な妖怪だったんだよ。


御天狐様は雲の上に住んでいて、二足歩行を嗜み、着物を着用し、さらには人語まで扱えるという完璧超狐っぷりを見せて、


人々から畏敬の念を集めていたんだ。


っと、ここまで言えばもう『お天気雨』という言葉が何に起因しているか、聡明な読者諸賢は気がついたことだろうね。


そう『お天気雨』とはお天狐様、つまり『お天狐雨』から生まれた言葉なんだよ。


だからほら、今でもお天気雨のことを別の呼び方で呼ぶことがあるじゃん。


狐の嫁入り』ってさ。


あれはお天狐様の結婚式で、嫁天狐様が流す涙が雨となって地上に降り注いだことから名づけられたんだよ。


そりゃいくら神聖な御天狐様だって、結婚式っつー一世一代の晴れ舞台だもんね、今まで育ててくれた親天狐様に感謝の涙の一つくらい流すでしょ。


 かくして嫁天狐様の流した涙――『御天狐雨』は太陽燦々さわやか三組、晴れ晴れとした“お天気”の地上に降り注ぎ、


人々に御天狐様の神々しさを知らしめ、名前が変わってまでも現代に受け継がれていったというわけ。


昔の人たちはお天気雨が降ると「御天狐様じゃ、御天狐様の仕業じゃ!(AA略)」って天を仰いで祈りを捧げたんだってさ。知らんけど。


ああ、あと補足として言っとくと、御天狐様の結婚式は必ず晴の日に行われたんだと。


雲の上に住んでいるんだから晴れとか曇りとか関係無いじゃんて思いたくなるけど、


ほらそこはね、文献に書いてあることだからさ、ボクも自分で考えててもう良く分からん。








って感じの内容を最近客の過疎化が加速度的に進行しているバイト先で様々勝手にでっちあげながら即興で考えた。。。




上記の長々とした文章を考えて得られたことは、



「お天気雨の語源は御天狐雨」



このたった12文字の妄想から色々頑張れば原稿用紙五枚半まで文章量を膨らますことが出来るんだということ。。。