書籍紹介
- 作者: 齋藤智裕
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2010/12/15
- メディア: 単行本
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これは第五回ポプラ社小説大賞で大賞を受賞した、斎藤智裕のデビュー作。。。
12月15日にバイト先行ったら、
ハーフ系イケメン男の写真集の隣に二面展開で山積みになってたから、興味湧いて購入してきた。。。
ポプラ社小説大賞といえば今日本で一番賞金が高い且つ、
言わずもがな、今日本で一番面白い小説を書く作家である、真藤順丈の「RANK」が特別賞を受賞した文学賞だけど、
これはその上を行く大賞受賞作品、つまり審査員の人たちに「RANK」よりも好かれたっつーことで、
もうそれだけで期待せずにはいられない。。。キャナットヘルプエクスペクトアイエヌジー。。。
事実、自分がバイトに入っている17時から21時までの間に、老若男女10人以上の人がこの本を購入していった。。。
やはり皆、真藤順丈の「RANK」が獲った特別賞を超える、
大賞受賞という偉業を成し遂げたこの作品に大きな期待をしているのだろう、とレジを打ちながら思ったものである。。。
で、内容。。。
大まかな流れとしては、
自殺しようとしてた四十歳男性のヤスオが、
突然現れた謎の組織の男――キョウヤ――の放つ「あなたのその体、売ってみませんか?」という謳い文句に釣られて、
ほいほいついて行ってしまう話。。。
…………こう書くと、なんか如何わしいアッー!な話に聞こえなくもないけど、要はドナーのことね。。。
腎臓がいくらとか、肺がいくらとか、心臓がいくらとか。。。
それを売ったお金で両親に恩返ししたり、病気や怪我を負ってる人を助けようって目的。。。
けれど、その裏には、
人の価値をお金で表すことが出来るのか、また命というのはそもそも何であり、どこに宿るものなのか?といった、
人間の根底を流れる疑問が、作品のテーマとして、これでもか、これでもかと、
まるでジンをひたすら呷り続けるイギリスジンのように散りばめられていた。。。
そう、つまりこの作品は、哀切かつ峻烈な「命」の物語なのである。。。
って帯に書いてあった。。。
うーん、「命」の物語を書いている割には少しページ数の足りなさが否めないような……。。。
展開が走りすぎてて、人物関係が希薄だから、ビバLOVE&LIFEを謳われても、どうもしっくりこない。。。
まあ、二十歳のロリ少女が四十歳のおっさんに一目惚れしたんだよと言ってしまえばそれまでだけど。。。
あと、主人公のテンションね。。。これ四十歳のおっさんのモンじゃないよ。。。
これは確実に私立文系テニサーチャラ男のテンションだよ。。。
だから、主人公を就活に失敗した私立文系テニサーチャラ男二十二歳に脳内変換すれば、作者は一目惚れの整合性も取れるし、
読者は「リア充ざまぁwww」出来るし、みんな幸せになれる。。。
あと、もう一つ。。。この作品のラストシーンで、
ドナーである主人公の脳を移植したと思われる*1レシピエントが登場するんだけど、
これはイカン。。。前のほうで『脳だけは自前じゃなきゃダメ』『俺の心や魂はゴミ箱行きかよ!』って、
ある意味この作品の「命」というテーマにもっとも深く関わる発言をしているにも拘らず、
ラストでそういうことをしちゃうのはイカン、イカンで遺憾、なんちゃって。。。
ああ、ついでにラストシーンで思い出したけど、名前の誤植をシールで直すというのは前代未聞なんじゃないだろうか。。。
別にゆっくり次の版で修正すればいいのにどうしてそんなことするんだろう、意味不明。。。
映画化した「インシテミル」の初版だって、重要なとこで名前の誤植あったんだし、気にすることはあんめぇよ。。。
巻末の著者紹介を見ると、どうやらこの作品を書いた斎藤智裕という人は、
慶応卒で元々俳優をやっており、テレビでは結構な活躍をしていたらしい。。。
あいにく自分は、テレビはおろか新聞も読まないし、インターネットもこのブログを更新する以外は使わず、
ホームもグーグルでトップニュースなどの表示はないし
大学でも友達はゼロ、いつも一人、学食で温泉卵かけご飯を食べているような人間なので、
俳優時代の彼の顔や活躍はよく知らないけど、
世の中なんでも器用にこなす人間というのがいるもんだと感心してしまった。。。
本作品も、新人特有(真藤順丈は除く)の荒削りな文章を完全に飲み込むほど、
前面に押し出された哀切かつ峻烈な「命」というテーマ(帯より)が評価され、
大賞を受賞するに至ったのだろうと推測する。。。いや絶対そう、まじで、テーマ最強、それ以外ない。。。
ぜひ次回作にも期待したいところである。。。
ああ、それと真藤順丈どこからでもいいから早く新刊出せー。。。
- 作者: 中条省平
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2000/01
- メディア: 単行本
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これも神保町の古本市にて。。。
見つけて中身をパラ見したときは、スゲー使えそう、いやっほいって心躍ってたけど、
いざ電車に揺られて読んでみたら、この本、文豪の文章引用して、そこに使われているテクニック紹介してるだけだった。。。
いや、それでいいのか、この本の場合は。。。
ただなんだろう、言葉にするの難しいけど、それはその文章にそーゆー風に使われているテクニックであって、
そのテクニックを自分の小説に昇華または応用するためには、
もっと根本的かつ端的に、「つまり……どういうことだってばよ」の解答が欲しいわけであって……ってダメだ、
これじゃただ自分の馬鹿さを露呈しているだけにしかならん。。。
つまり、著者の文豪文章薀蓄集だったってことかな。。。
- 作者: 西澤保彦
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/05
- メディア: 単行本
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隔離された全寮制の学校、集められた特別な“子供たち”、転校生が連れてくる魔物、悲劇。。。
これだけ見て、真っ先に思い浮かぶのは、恩田陸が書く理瀬シリーズ第一作「麦の海に沈む果実」なわけだけど、
残念というか当然というか、最後は見事に裏切られました。。。
読んでいる最中は「麦の海とこれ、どっちが早いかなんてめんどくさいし無粋だからいちいち調べないけど、
自分が読んだ順番が麦→これだったためか、どうしても二番煎じな印象が捨てきれない」
とかクールな批評をかましてやろうと息巻いていたのに、これじゃただの調子こいてる勘違いヤローだな。。。
そ、そんな処、あ、あまりジロジロ、み、見ないでください……ハズカシイです……//// だな。。。
今まで紹介した三作も含めて、たかだか四作品読んだくらいじゃ、
私的西澤保彦論を展開するにはあまりに心許ない情報量だから、ここでは
「神のロジックを人のマジック(科学)で解き明かそうとする話だった」
と、気の利いているように見えて実は大して利いていないことだけ言っておこうと思う。。。
- 作者: 野村理朗
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2010/06/29
- メディア: 新書
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『なぜ○○は××なのか』系新書。。。
『なぜアヒル口に惹かれるのか』
A.
・アヒル口はそのままでも笑顔に見える口の形だから
・アヒル口は守ってあげたい「赤ちゃんの口の形」であるから
・日本人の6割が対人不安になりやすく、
物事に愛着を抱きやすい「可能性」のあるセロトニン・トランスポーターSS型の遺伝子を持っているため、
遺伝的にアヒル口に萌えやすいから
・アヒル口というパーツに対して快感情抱けるのは、
主体のない対象に一方的な快楽を求める「萌え」という欲望を現代人が持つようになったから
・美の格差を生むために女性は人種の平均から逸脱したところに美の価値を置くから
・乳児期に口唇期リビドーが満たされない人は口への執着やフェチを持つようになるから
以上。。。
メディアファクトリーから刊行されているこの新書は全168ページから構成されているけれど、
結局最終的に言いたいこと、つまり題名(主題)に対する回答をまとめると、本当に必要なのは上に挙げた6つの真実だけだという事実。。。
そもそも『なぜ○○は××なのか』系新書は全部そんな感じで収まりそう。。。竿竹屋がどうのこうのとかまじくだらねー。。。
因みに余談だけど、
簡単にアヒル口を作るコツは、くちびるをアヒルのくちばしのように突き出すのでは“なく”、後ろに引くこと。。。
引きながら、くちびるの先っちょをほんのちょっとを意識して突き出す。。。
素人は絵や写真で見るアヒルのくちばしを真似て、引く前にくちびるを突き出してしまいがちだけど、
そうするとアヒル口ならぬアナル口になってしまうので注意が必要。。。
このやり方で、自分は30分鏡の前で練習して、アヒル口を完璧にマスターすることが出来た。。。
たぶん使う機会なんて一生ないだろうけど、どっかで役に立ってくれればいいと思う。。。
- 作者: 西尾維新,VOFAN
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/07/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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維新は一体いつまでこのシリーズにしがみついてるんだろうね。。。
いや、むしろこの場合、しがみついてるのは読者と、そして出版社のほうか。。。
「猫物語 黒」
読んでいて色々言いたいことが思い浮かんだけど、
自分自身が、わざわざ購入してまでしがみついてる読者である手前、
ここで批判なんかをたくさん書き連ねて強い言葉を使っても弱く見えるだけだからほどほどにしようとは思う。。。
にしてもしかし、流石にここまでひどいとゴーストライターか、もしくは維新がわざとここまでレベルを落として書いてるんじゃないかとさえ疑いたくなってくるね。。。
意図的に、恣意的に、作為的に、映像から逆参入した読者のために。。。
だって、文章がやけに視覚的だし、冒頭から四分の一以上は必要のない“ただの会話”だし、いやに他作品を引用した比喩が多いし、メタ的な発言も多いし。。。
大学にいっぱいいる、自称アニメ評論家の人たちが雄弁語ってたけど、最近は上のような要素を含んだアニメが人気なんだって。。。
神の視点に立って無意味な会話をひたすら楽しむアニメやら、他作品の引用、つまりはパロディネタを多用するアニメ。。。
そんなアニメが好物な人たちのために、維新が「アニメ版では」を連呼し、冒頭からの94ページと「休日出勤の神谷先生」を書いたのだと考えれば、
この作品シリーズの劣化の大部分に納得がいく。。。
つまりこの作品は、最近のアニメを好み、アニメからこのシリーズに入った人達を喜ばすために、もしくは、喜んでくれるか確かめるために維新が書いた、実験小説だったんだよ……! な、なんだってーー! ということに。。。
てか、そうでも思わなきゃ、三年前の夏、クーラーの効いた高校の図書室で初めて「ひたぎクラブ」を読んで、ライトノベルっておもしれー!と軽く感動した自分が報われない。。。
「失明するだろうが!」
「失言するからよ」
「何だその等価交換は!?」
「銅四十グラム、亜鉛二十五グラム、ニッケル十五グラム、照れ隠し五グラムに悪意九十七キロで、私の暴言は錬成されているわ」
「ほとんど悪意じゃねえかよ!」
「ちなみに照れ隠しというのは嘘よ」
「一番抜けちゃいけない要素が抜けちゃった!」
いま読んでも神憑り的なテンポのよさだ。。。サスガ、重し(想し)蟹(神)が憑いているだけある。。。
障りと触りが掛かっているだけの猫なんかとは比べ物にならない出来のよさ。。。
ここまで書いたからには、今後刊行される予定の大量の続刊にはもう一切近寄ることはないだろうけど、
シリーズ変わって、西尾維新最後の良心である「ぼくの世界」には期待したい。。。
確かバリウムみたいなキャラが出てた。。。いや、胃カメラだったか。。。
あと「めだかボックス」にも。。。
最近地味に面白くなってきているし、実は今一番、台詞が西尾維新らしい作品ってこれだと思う。。。
『約束を守る』『約束を破る』『僕は今 どちらでも好きなほうを選べるんだから』
『約束は破るためにあるとか言ってるワルモノには』『考えられない自由度だ』
うーん、これは他のジャンプ連載陣では見られない、維新にしか出せない見事な台詞だなー。。。
*1:直接、移植したという描写は書かれていない