書籍紹介





友人に推されて。


依井貴裕のデビュー作「記念樹 メモリアル・トゥリー」


著者近影見るとこの人高校生みたいな顔してるけど、これ1990年初版で当時26歳、っつーことは現在47歳、もうオッサンだなー(笑)



本書は論理性と意外性を大事にした所謂本格ミステリ、なんだけど……、そんなことより目を向けるべきは著者:依井貴裕の“女子力の高さ”であろう。


その片鱗は随所に散りばめられている氏のファッション描写に見ることができる。いくつか抜き出してみよう。



『紺と黄色のスタジアム・ジャンパーにストーン・ジーンズ、右手にランセルクラッチ・バッグを抱えた男』


『青と白のロンドン・ストライプのシャツにブラック・ジーンズといったありきたりな格好』


『渋いプリントシャツは、小づくりな顔立ちによく似合っている。スラックスも嫌味のない茶系統のチェックで、コンビネーションもいい』


『まるで公務員のような現れ方をした理は、グリーンのVネック・セーターの衿元から赤いチェックのシャツを覗かせ、濃い焦茶色のコーデュロイのズボンを組み合わせていた』



以上は全て男性人物に対するファッション描写なのだが、これだけ見ても氏がファッションに対して並々ならぬ意識を持っていることが分かるだろう。


しかし圧巻は女性人物の描写である。以下を読んでもらいたい。



『大人っぽい顔立ちで、切れ長の目と長い髪が印象的だ。茶色がかったストレートヘアーで、先だけ少しカールしている。淡い色調のクラスター・ストライプのシャツにペイズリープリントの濃いスカーフを組み合わせ、スカートはジャケットに合わせたグレーのタイト、それをトラッドテイストな茶のベルトで決めている。ダブルブレストのフォーマルな装いが、一層大人っぽさ協調して見せていた』


『前を歩く佳代子はピンク色の傘を肩に載せながらさしている。インディゴブルーのダンガリーシャツに焦げ茶のキュロット、背が低いから大学生には見えない。それに対して、朋美は濃いベージュのワイドパンツに淡いグリーンのカーディガンと、コンパクトに、かつ女っぽくまとめている。トリコロールのフラットシューズを履く佳代子に比べて、オペラパンプスを選んだ朋美は相当大人に見えた』



『ホット・ココア、シナモン・ティー、フルーツ・ア・ラ・モード・、ブルーベリー・ヨーグルト・ジュース、グレナーデン・スカッシュ、グリーン・ティー、チョコ・タルトのセット。個性豊かなオーダーを、ウェイトレスは一品ずつ並べていった』




なぜここまで丁寧に!?と思わず声を上げてしまいそうになるだろう。


三番目はファッションではなくスイーツの描写なのだが、女子力の証明には欠かせない要素だと考えて加えておいた。


だって『グレナーデン・スカッシュ』ですよ、そんな言葉生まれて初めて聞いたよ。『グレナーデン・スカッシュ』って……なにそれ、おいしいの?




とまあ下らない前置きはここまでにして、本編について少し。



すげー「読者への挑戦」なんて久々に見た。ミステリに明るくないボクとしては、小学生の頃読んだ「名探偵チビー」シリーズ以来かな。


さらに「密室講義」の舌の回り様には作者の密室トリックに対する意欲の高さが窺えた。


事件を解明するための手がかりや伏線の意外性、またそこから導き出される推理の理論性も(落ち度があるとは言え)秀逸でGOOD!


個人的には、アリバイ工作の真相と犯人特定の証拠として手品を機能させたところがあやしゅうこそものぐるおしけれ。


ただなー、人死んだのにみんな少し淡々とし過ぎやしないか。大学生のクセに。雰囲気がズレてるってか小説としての違和感がバリバリだ。



友人の薦めによると次のこの人の作品は「夜想曲」かー、図書館で借りてこよう。











書き下ろし日本SFコレクション ノヴァツー。


1は図書館にありませんでしたー。


載っかってんのは12人! 東浩紀恩田陸神林長平、倉田タカシ、小路幸也新城カズマ曽根圭介田辺青蛙津原泰水西崎憲法月綸太郎宮部みゆき


やっぱり名の知れたベテラン所は別格だなー。



神林長平 「かくも無数の悲鳴」



オタの大好きな多元世界論に右ストレートを打ち込んだ問題作。


前に採り上げた「1940年代SF」のシオドア・スタージョン「昨日は月曜日だった」もそうだったけど、


ボクは、物語のメインとなる舞台や力の裏で、とんでもなくデカイ存在が糸を引いている話が好きみたいで、例えば「ハガレン」に於ける錬金術⇔お父様の関係とか、


「ワンピース」於ける大航海時代⇔空白の800年みたいな感じ。


この話も、裏で地球外生命体が糸を引いているんだけど、その糸の先にあるものが多元世界でしたという内容。


宇宙人が地球を支配したは良いけど、多元世界がうぜーからどれが本当の地球世界か人間を駒にして一つに決めようってね、すごろくを始めちゃったわけ。


主人公はその駒の一人で、↑の真相を聞いて駒を操る宇宙人達を殺そうとする。しかし一人宇宙人を殺すと、そいつが操っている多元世界が消滅し何億という人間が死亡してしまう。


まあそれでも主人公は最後、『多世界解釈ってやつが、気に入らない〜いまとは別の人生がある、しかも無数に、なんていうのが証明されたら、生きているという実感を人類は失う』と啖呵を切って、自分以外の世界を終わらせてしまう。「かくも無数の悲鳴」とは、そのとき消滅する多元世界に住む人たちのものだったのだ――とね、そんな按配。


多世界解釈が存在するという事実だけの作品はたくさんあるけど、その裏に多世界を操る存在がいる、という設定が鳥肌もんだった。






東浩紀 「クリュセの魚」


東浩紀って、エロゲや哲学でアニメを語るウザイオタを作り出すキッカケになった人って認識しかなかったけど、この話は面白かった。




恩田陸 「東京の日記」



厳戒令下で情報規制の掛かった架空の東京とか大好物です。


高橋しんの「花と奥たん」的な、真藤順丈の「RANK」的な。





宮部みゆき 「聖痕」



叙述、どんでん返し。今作NO.1(書くの飽きた)




田辺青蛙(ベテランではない) 「てのひら宇宙譚」


話の内容より、円城塔と結婚したことが衝撃。






以下略(疲れた)






結論:ボクも倉田タカシみたいにツイッターで小説を書いて大森望に拾ってもらおうかな。







春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)




米澤穂信の小市民シリーズ。


日常の謎モノ。


そういえば古典部シリーズがアニメ化するらしいけど、こっちの方が適当だったんじゃないのと考えたり。いや、ボクは古典部シリーズ読んでないからなんとも言えないけど。


だって一作目の「氷菓」が図書館にないんだもーん。


こっちがアニメ化したら、小佐内さんより小鳩くんのが人気でそう。んでPixivに「小鳩くん 男の娘Ver」の絵が氾濫すると。


中身的には、小市民を目指す小鳩くんが、巻き込まれて事件を解決するんじゃなくて、自分から事件に首を突っ込んで解決する姿勢が良かった。


長門とみくるとは描写を差別化し、初めからハルヒを狙っていたキョンみたいなね、スナイパー性を感じた。











角川お得意のアンソロ本。


掲載は、 乙一恩田陸梶尾真治、ジャック・フィニティ、貴子潤一郎太宰治


乙一の「Calling You」って一回読んだことあると思ったけど、初見だった。


高校生御用達作家かと思ったけど、やっぱり乙一面白いな。







最近電車乗ってもすぐ寝ちゃうから、一ヶ月で4冊しか読めていないという体たらく。


もうちょっと夜は早く寝なければなーと思う。