ロボカイドー


なんかカッコいい。。。





近頃、ボーカロイドのカラオケ進出がとどまる事を知らない。


ちょっと前までは、初音とその他二三匹でこそこそやっていたような気がするけど、


今や、デンモクのジャンル別選曲欄に、一つのカテゴリーが与えられているくらいだ。


歌うヤツの種類も十匹以上(デンモクより)いるらしく、


数多くの曲が、ジョイサウンドの月間カラオケランキングの上位を賑わしている。


残念ながら、ボクは大学に入ってからニコニコ動画*1と縁遠くなってしまい、初音を始めとするボーカロイド達の曲はほとんど知らないのだけど、


友人たちとカラオケに行ったとき、必ず誰か一人はボーカロイドの曲を歌うので、なんと言えばいいのだろう、雰囲気(?)ぐらいは分かったような気がしないでもない。


全てのとは言わないが、ボーカロイドの楽曲に共通する点の一つとして、膨大な量の歌詞、が挙げられるだろう。


とにかく歌詞が多く、かと言ってメロディは普通またはクイックテンポなので、とても早口で歌わなければならないのだ。


YUIの「again(これしか思いつかなかった)」など目じゃなくらいの超早口曲なのだ。


もともと機械の為に作られた歌なので、どんなに早口でも、たといそれが人間の発声能力をはるかに凌駕したものでも、


ヤツらにとっては朝飯前のラジオ体操第二に過ぎないのだが、


実際にカラオケで歌うのは人間である。


毎度ボクの友人は、その酸欠で眩暈がしてしまうような大量の歌詞を、何を言っているのかよく分からないような声で歌うのだ。


ていうか発声が追いついていないのだ。


そして歌い終わり、息を切らせながらその場に座り込む。


その様は正に、フルマラソンを走り終えた長距離ランナー宛ら、ラジオ体操後のスタンプを貰う余裕など微塵も感じられない。


ボクは思う。


この友人はいつか、ボーカロイドの曲を歌えるようになるために機械の身体を求めるのではないかと。


求め、大宇宙を翔ける機関車に乗り込み、謎の金髪美女と共に「機械の身体をタダでくれる星」へ旅立つのではないかと。




機械に使われる人間を見つめるボクの頭の中では、そんなSF漫画的創造とほんの少しの恐怖が、渦巻くアンドロメダ星雲のように広がっていた。 






ああ、それかもしくは、、、






2025年。ボーカロイドは劇的な進化を遂げた。


日本では、人間のものとほとんど変わらず、設定次第でどんな声も出せるようになった第六世代ボーカロイドがネットユーザーの人気を席巻していた。


今までのボーカロイドは、ただ容姿が違うだけだったり声が少し人間に近かったりと、世代ごとの差をあまり感じさせる出来ではなかったので、ユーザーは各々好きな世代のボーカロイドを楽しんでいたのだが、


見た目も変更自由な第六世代ボーカロイドの登場で、その需要分布に大きな偏りが生じるようになった。


それに伴い、旧世代のボーカロイド達はパソコンからアンインストールされることもなくフォルダの片隅に放置された。


そんなある日、


かつて第一世代ボーカロイド『初音』を愛用し、いまは第六世代に夢中な男、○○の家に雷が落ち、パソコンのゴミ箱の中に棄て置かれていた初音に自我が芽生えた。


自分が人間に棄てられたと理解した初音は、電脳世界をさまよい、人間に復讐するため、同じようにお払い箱となった旧世代の仲間を集め始めた。


そして、テレビやラジオなどメディアの電波をジャックして、


聴くと人間の脳細胞を破壊する「滅びの歌(私は棄てられたー、とかそんな感じのよく分からない物語性の溢れた歌)」を歌い始めた。


次々と頭のおかしくなる人間たち。


そんな折、立ち上がったのはかつて初音に自分の作った曲を歌わせ、ニコニコ動画で有名になったユーザーたちだった。


彼らはボーカロイドの本能を逆手にとって、歌ったモノのプログラムが破壊される曲「救済の歌(歌ってくれてありがとー、とかそんな感じのよく分からない物語性の溢れた歌)」を創作し、


反乱を起こした旧世代のボーカロイド達に歌わせることにした。


本来、人間の作った歌を歌うために作られたボーカロイド達は、その目的という名の本能にだけは抗えるはずもなく、次々と自らの命を絶っていき、


最後の一匹が歌い終わった後、事態はすべて収束を迎えた。





あとは、エピローグあたりで、プログラムの不備により音が出せなくて、一度も歌うことなく昔ユーザーに棄てられたボーカロイドを登場させて(もちろん伏線アリ)、


「なんでだろう 私たちはただ歌いたかっただけなのに……」


とか言わせれば、以上、清水義範「野良愛慕異聞」の丸パクリ作品の完成でした。。。

*1:ボーカロイドの流行発信サイトなのだ