書籍紹介







お馴染みちくまのヤツ。。。


「もうしょうがないなー、シェイクスピアのヤツは。あいつ、人殺せば悲劇だと思ってんだもん、ほんとしょうがない三流作家だよなーシェイクスピアのヤツ」


この本に載っている「シェイクスピア傑作選」を読んでの感想である。。。


自分はシェイクスピアなんて読んだことないから笑うことしか出来なかったけど、これ文学部、特に英文科の人が読んだら感心するところもあるんじゃないかと思う。。。


「夕顔殺人事件」もそうだ。。。


自分は源氏物語を通読した事がないから、終始爆笑をこらえるのみだったけど、


読んだことある人なら別の意見を対立させること――てかツッコミ――が出来るんだろう。。。


今回の傑作選(本書)は、そういういわゆる“元ネタ”の知識を要する作品が多かった。。。


当然、その元ネタを知らなくても楽しめるんだけど、自分のように笑うこと“しか”出来ない状態になってしまう。。。


清水義範の作品を、高校時代図書室で友人に薦められた「バールのようなもの」以来、もうずいぶんたくさん読んできたけど、


彼の――いや次からはカッコつけて氏の、と言おう――作品は、知性と笑いの融合であると思う。。。


それは言葉の不思議を謳った小説でもパスティーシュでもそうなんだけど、知性という土台に笑いを被せてると言えばいいのかな、そんな感じ。。。


上で挙げたのを例に採ると、前者の場合、シェイクスピアの作品の知識(知性)という土台に、笑い――この場合は女子大生の的確(?)な指摘と、作品の教訓に絡めたその現実背景――を重ねていている。。。


また後者は、源氏物語を知り尽くした上で、その中の人間の死をミステリに仕立て上げるという、破天荒遊戯を披露している。。。


これらは、ユーモアセンスだけではとても出来ない芸当である。。。


どちらも、“元ネタ”に於ける膨大な知識という知性が必要なのだ。。。




TAGROの「変ゼミ」第三巻(講談社、2009・12)で加藤あんなは言っていた。。。


『出来ますよ 水越先輩 天才ならね 馬鹿にだってなりきれる』と。。。


氏の笑いを馬鹿、と評するのは心苦しいが、以上より清水義範が天才であることが証明されたのだった QED






喜劇綺劇―異形コレクション (光文社文庫)

喜劇綺劇―異形コレクション (光文社文庫)




先日、江戸川乱歩の「人間椅子」を紹介したとき、『異形小説の中ではトップレベルによく出来たタイトル云々』とか、キリッを付けられても文句を言えない文章を書いたけど、


実は、異形小説なんて全然読んだことないし、それ以前にそんな小説の区分があるのかも分からないから、図書館の棚から本書を発見したとき速攻で手提げ袋の中に放り込んだ、


というのは大嘘憑きのオールフィクション(このフレーズ結構気に入ってる)で、実は、今日本で一番面白い小説を書く真藤順丈が話を寄せているから借りてみた、というのがノンフィクションでしたー。。。


流石に四十四巻も続いているだけあってこのシリーズ、編集者:井上雅彦の内輪感がスゴイ。。。


まあだから何、という話であるんだけど。。。


正直、お世辞抜きで真藤順丈「終末芸人」が抜群に完成度が高かった。。。


これで一冊作れるだろうというくらいに。。。てか真藤順丈の中では出来てんじゃないかな、それくらい濃い内容だった。。。


あとは、牧野修「山藤孝一の『笑っちゃだめヨ!!』」


現代のお笑い風刺系。。。


これ次の「世にも奇妙な物語」に使って欲しい。。。一番最近やってた、ニコニコ動画をネタにしたみたいに。。。


ああでもお笑いブームももう古いか。。。


『演者がすべきことは「ここで笑ってもいいですよ」というタイミングの計算だけだ』


これ、アニメとか漫画とかティーンズのパロディネタも似てるよーな気がするね。。。



そしてまた清水義範ですよ。。。


世界最貧国になった未来の日本が舞台なのはまあ普通なんだけど、


そこに登場する子供の名前を美星(テラ)、高貴(ノブル)、勝利(ヴィクト)と読ませるあたり、


さすが清水義範、よく分かってらっしゃる。。。


最後の節子、じゃなくてセツコとのやりとりもフイタw


『セツコ、空襲警報や。防空壕に入らんといかん』


『うち、ねむたいねん』




この話、かなりバッドエンドだけど、後味悪くなく楽しめて良かった。。。






村上かるた うさぎおいしーフランス人

村上かるた うさぎおいしーフランス人




自分で言うのもおかしいけど、また、こんな春樹作品を……。。。


いい加減「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」でも読みやがれって話ですよね。。。


もはや使い古された言い訳だけど、あの春樹的文章――実際どういうものなのか自分はおろかたぶん大半の人が説明できないんだろうけど、とにかく春樹が紡ぎだす文章――が肌に合わないのである。。。


もし触れると、鳥肌を通りすぎ、かぶれを越えて、蕁麻疹が発生してしまうのだ。。。


アフターダーク」を読んだときなど大変だった。。。


少しでも腫れが引くように氷風呂の中で読んだのだが、季節が冬だったので、そりゃもう凍死にそうになった。。。


とここまで書いて、これ誰かの文章似ているなーと思った。。。分からない。。。


本書は、春樹的五十音カルタ。。。


「またたび浴びたタマ」のがよく出来てたなー。。。






ここは東京

ここは東京




説明がなくても東京を撮ったって分かるんだよなー、この人の写真は。。。


神奈川でも千葉でも埼玉でもなく、東京。。。


「ここは東京」って写真見れば分かるんだよなー、なんかすげー。。。






チェルノブイリ 春

チェルノブイリ 春




『廃墟 チェルノブイリ』の人の新作。。。


チェルノブイリ 春』。。。


春、springのチェルノブイリを写した写真集。。。


とりあえず、福島の原発20km圏内はもう死んだ、とか思ってる人がいたら、これを眺めてみればヨロシ。。。


事故から25年経った今でもガイガーカウンターがメーター振り切ってビービー鳴いてる、こんな危険な地域にさえ、


春という季節は、世界に等しく生命の息吹を運んできているんだなと、思わず声が詰まりそうになった。。。


人間が住めなくなるからって死んだとか終わりとか、エゴだよそれは!


緑の大地、歌う小鳥、走るイノシシ、チェルノブイリは間違いなく生きているね。。。






ケータイ小説は文学か (ちくまプリマー新書)

ケータイ小説は文学か (ちくまプリマー新書)




本当はもう三年前くらいから、図書館の文芸評論の棚で見かけていたんだけど、現在から見てイマ、このときに読むことが意味を成すと考えて、ずっとスルーしていた、


というのは大嘘憑きのオールフィクション(本日二度目)で、単に「儚い羊たちの祝宴」と同じ理由、借りても読まないを繰り返してだけでしたー、ズコー(古典的)


本書を読む前から、ボクはずっとケータイ小説に対して、一度謝らなければいけないと考えていた。。。


それは、ケータイ小説至上人気ナンバー1の売り上げで、2007年度の文芸書ベストセラー第一位に輝き、後に映画化もされた、読めばゼッタイに泣ける、女子高生の今をリアルに描いた、


美嘉――いや呼び捨てなんておこがましい――美嘉さん著の純愛小説「恋空」に関してだ。。。ふぅ。。。




ボクは四年前、なぜだか親の敵のようにケータイ小説を憎んでおり、その中でも取り分け「恋空」に対して、強い憎悪の念を燃やしていた。。。


今考えればなぜそんなにも敵意を露にしていたのか定かではないけれど、


予想するところでは、多分その頃のボクは、なんかよく分からない気持悪さを持った中二病患者だったのだと思う。。。


そうでもなきゃ、ティーンズ文庫を無条件に持ち上げて、読んでもない「恋空」を貶めるなんて真似、正常な人間ならしないだろう。。。




本書には「Deep Love」と「天使がくれたもの」「赤い糸」、


そして美嘉さんの「恋空」という四大ケータイ小説の全容が著者:石原千秋氏の要約文で書いてあるのだが……、


まず前の三作品の要約文は一見の価値があると、この場で声を大にして言っておこうと思う。。。


ホント今すぐ図書館で借りてきて読むべき。。。


角川文庫版を上巻読んで投げ出した自分が言うのもなんだけど「ドグラ・マグラ」などとは比にならない、真のキチガイ教教主か、はたまた、キチガイ地獄から輪廻転生、戻ってきた者の書いた話に違いない、それほど常軌を逸しすぎた内容だった。。。


実際、電車の中で読んでいて、常にそうらしい神をだきたく異精になったらしい、くらいだ。。。


読めば、高校生妊娠中絶記憶喪失新潟地震タイマフィアレイプエイズエクスタシーアユレイナアイラパオテルオカグコータカレンアッくんたかチャン拓舞幹芽衣快沙良沙羅もうやめてくれ! となることは必至である。。。


しかし、「恋空」は違う。。。


美嘉とヒロ、癌とセックス、これ即ち純愛である。あとレイプと中絶もあったけどそれはまあ置いといて、


なんて「切ナイ恋物語」なのだろう!


クライマックスなんて、余命幾許もない親愛なる癌患者ヒロ(たぶんイケメン)と川原で青姦とは、これまたなんという愛のある羨ましいシチュエーションであろう!


「正直な話、立場を逆転させて、自分が変わってヤリたいくらいだ。


死期迫る愛すべき癌患者美嘉(もちろん美少女、ああ、あと欲を言えば賢い子だといいな!)と川原でアオカン!←とてもいい響きだ。


と思ったけど、別に死期迫る癌患者なくてもいいな、あと川原じゃなくて普通に屋内で十分だし、美嘉である必要もないか、てか賢い美少女だったらだれでも良いや! でもオプションは狐耳で」


と、――――上三行からここまで正木博士の狂行――――





結局何が言いたいかって、「恋空」は他のケータイ小説とは一線を画す存在であるということだ。。。


「切ナイ恋物語」で純愛であるということだ。。。


四年前のボクはそれを知らずに稚拙極まりない誹謗中傷を繰り返し、


あろうことか、こんなくだらない記事に感化されて、


アマゾンレビューに「焼きいもの焚き火に使ったらよく燃えました! 星五つです!」


などと、ケータイ小説の女神様(作者が基本女性だから)を愚弄するような文章を書いてしまったのだ。。。


いや、でも実際これだけなら、アホ中二野郎のクズみたいな戯言の一つに過ぎなかっただろう。。。


しかし問題はその後に起こった。。。


他のアホどもが、焼きいもの焚き火、という言葉を引用し始めたのだ。。。


「別の人のレビューで焼きいもの焚き火にいいという話が載っていたので使ってみました。確かによく燃えました!」というような。。。


そして広がっていく「恋空」=焼きいもの焚き火、という負の印象連鎖。。。


ボクは今、罪悪感で胸が張り裂けそうである。。。


なにが「焼きいもの焚き火」だ、まずはその寒い発想を暖をとる炎でなんとかしやがれという話である。。。


当時、部活の後輩にヘラヘラ語っていた自分が本当に恥ずかしい。。。




嗚呼、私はあのころの黒歴史を形の分からないケシ炭になるまで燃やし尽して、無限存在*1の餌にしてやりたいくらいだ。。。





現在2011年、ケータイ小説ブームは風前の灯すらも消え、今や話にも挙がらない燃えカスを残すだけとなってしまったが、


かつて2007年文芸書年間ランキングの1位、2位、3位を独占した、という前代未聞の記録は、人々の記憶の中にこれからも残り続けることであろう。。。


そして遅ればせながらボクも、過去の己の愚行を猛省し、「恋空」いやケータイ小説というジャンルそのものに、この場で謝罪の意を表しておきたい。。。


最後に、罪滅ぼしになるかは分からないが、「恋空」の映画サイトへのリンクを貼ってこの記事を終わりにしようと思う。。。


映画版「恋空」は、主演ガッキーの世界平和に必要不可欠な可愛さを堪能できるすばらしい作品である。。。

*1:今思ったのだが、もしかして無限存在のエネルギー源て、ホントに元中二病患者の黒歴史なんじゃないだろうか。このアンドロメダ銀河が誕生してから現在に至るまで、我々人間たちの漆黒の足跡を脈脈と吸収し、その過程で現在のようなフォルムに進化を遂げたのではないだろうか。故に、ヤツはこれからもこの地球という星に住む、生きとし生けるモノたちの暗黒(くろ)きガラス玉を糧に生き続けるであろう。そう無限の時を超越(こ)えて……。  ああ、正直、こういう文章↑考えてるときが一番楽しい