書籍紹介



笑うな (新潮文庫)

笑うな (新潮文庫)





久々読了、筒井のショート・ショート。


御大は相変わらず引き出しが多い。




表題作『笑うな』は、裏表紙の解説にて「タイムマシンを発明して、直前に起こった出来事を眺めるというユニークな発想」と評されているけど、


これ、絶対ただのナンセンス小説だろー。意味なんてありゃしない。けど強いて何か言うなら“人間ツボに嵌ればなんでも面白い”ってことかな。



『悪魔を呼ぶ連中』他十数作


御大お得意の最後の一文で落とすおバカ系ショート・ショート。




『正義』は面白い。


正義感が極端に強い男は悪と戦うことを好む。だが、そんな男が死後天国に行ったらどうなるか。


わずか2Pで2元論の概念をガタガタに揺るがす力量がハンパねー。アンパンマンがヒーローでいられるのはバイキンマンのおかげである、みたいな話だ。



『赤いライオン』


筒井って時間を変えて同じ描写を繰り返す演出よく使うなー。ダン・ヴァニとかダン・ヴァニとかビアンカとか。


自分の夢の中の自分の夢の中の自分がライオンに襲われる話。自分の夢の中の自分の夢の中の自分→自分の夢の中の自分→自分へと言葉が伝わっていくというのは伝言ゲームの様で面白い発想だと思った。



『駝鳥』


冒頭から積み上げて、最後に開放する。読後の余韻も含め、まるで星新一のショート・ショートを見ているようだ。実に鮮やか。


さらにスラップスティックな要素を入れることで、筒井康隆独自の味を出しているトコとかもう最高。今作No.1



『トーチカ』


有名な(?)超中二病育成小説。けど真面目に読んだらけっこうガチSFだった。ちなみにボクはルビじゃなくて漢字で読む派です。





完全・犯罪

完全・犯罪






泰三の短編ー。



『ドッキリチューブ』って泰三だったのか! 確か二つ前の『世にも奇妙な物語』でやってたな。でもあれ“Tube”なのにニコニコ動画だった。


まあ最近ニコニコ生放送が色々やらかしてるから皮肉の意味も込めたんだろう。



この人もジャンル多彩だよなー、ホラーSFミステリー、なんでもござれの無敵超人だ。



本作のコンセプトは「“最後の一行”がもたらす想像不能の驚きと恐怖」



『双生児』が一番かな。


幼い頃から互いの人格を入れ替えられる双子の話で、最終的に死んだのはどっち的な。


正直、「バリアー!」「バリアー破り!」「バリアー破り返し!」みたいなオチだけど、


自らのアイデンティティーについて苦悶する一卵性の双子が見てて面白かった。


考えてみたら、“双子”を掘り下げた漫画って思い浮かばないな。タイム系の4コマにありそうだけど。双子あるある的な。


そういや『ナショナル・ジオグラフィック』の最近の号で双子特集やってた。読んでないけど。


一卵性男、一卵性女、二卵性男、二卵性女、二卵性男女、二卵性女男、双子にもこれだけ種類があるんだから、日常系双子コメディ4コマいけるんじゃないかー。






私の家では何も起こらない (幽BOOKS)

私の家では何も起こらない (幽BOOKS)






あー読み終わった後はすげー色々思い浮かんだのに全部忘れしてしまったよー。


でも読み返しても思い出せないということはしっかりまとめてなかったんだろうなー。


夢と現実とが複雑に入り組んでいて、境目が曖昧で、まるでダリの絵のようにシュールな世界に読者を誘うような作品だったとか意外に便利な言葉を並べておこう。






植物図鑑

植物図鑑






ベッタベタの甘っま甘だなー!


なぜ有川浩の作品が多数映像化されてる中、この作品に白羽の矢が立たないのかって疑問に思ってたけど(読む前は)、どう考えてもベタラブチュッチュなこの展開の所為だろう。


野草のレシピ紹介以外は、ただ幸せなカップルのイチャラブデートを見せ付けられてるだけじゃねぇか、って視聴者の独身OL層がキレちゃうから。



彼氏のイツキが野草レシピに詳しい文字通り“草食系男子”と見せかけて、触手で女を絡め取る食虫植物だったのには笑った。皮肉だろこれ。


あと主人公のさやかちゃん、いなくなった彼氏との思い出を一つ一つ忠実に再現するって、ヤンデレの才能あるよ。



まあ作者本人もあとがきで「主役カップルが臆面もなく甘ったるくなっていて後で愕然」と語ってるし相当なんだろうな。



表紙イラストのカスヤナガト、昔は中村祐介と間違えることがあったけど、最近はよく見かけるんで覚えた。



今年の春はこの本を手に、少し町を歩いてみることにしよう。











書き下ろし日本SFコレクション ノヴァ3


ノヴァ2は既読。


今回は2の奇を衒ったラインナップとは打って変わって、ガチでサイエンスなフィクション的布陣。略してGSF布陣。




小川一水『ろーどそうるず』



この人は確か『煙突の上にハイヒール』書いたんだっけか。


あの話、登場する発明品が妙に現実の生活に寄与したもんばっかだったな。ドラえもん程じゃないけど、インスパイヤされた感じの発想だった。


今回載っている『ろーどそうるず』も、ロボットが利用者の元で学習した内容がメーカーにフィードバックされる設定の話で、主人公の立場が、どこかドラえもんを匂わせる内容となっていた。


ただ本編の場合、主人公のロボットというのがバイク、そこから送られたデータを受け取るのが、メーカーではなく研究開発用のテストマシンという仕組みだけど。



物語は終始この二台のバイクの対話だけで進んでゆく。



この作者は乗り物の人格をリアルに描くのが得意らしいけど、


今回ボクがこの話の主人公であるバイク“M3R3011”に投影した姿は、映画『ドラえもん のび太の海底奇岩城』に登場した四輪駆動車の“バギー”だった。


あの“バギー”も、のび太たちとの冒険の裏で、この物語のような友情話をメーカー用のテストマシンと紡いでいたのだろうか。


その事を思うと、ボクは29年の時を越えて、胸の奥になにか熱いものが込み上げてくるのを感じずにはいられなかった。




『想い出の家』



電脳コイル』を大人視点で描いたような。


本編は人情話だけど、大人視点で描かれると物語がドス黒くなるから好きじゃないな。ゲームは子供のおもちゃだろって感じ。


だから『電脳コイル』は良い。まだ途中だけど。DVD借りて全部見る。





円城塔『犀が通る』



円城塔の。うえーんワケが分からないよー。




朝暮三文『ギリシア小文字の誕生』



ギリシア小文字の起源をただひたすら性に関連付けて考えてみましたよーって話。そういえばギリシア神話ってエロイ話ばっかりなんだっけ。清水義範あたりがやりそうな話だ。それか筒井。




東浩紀火星のプリンセス



前回『クリュセの魚』の続き。


やるじゃん東浩紀




結論:NOVA4はもう出ているのかな。






モザイク事件帳 (創元クライム・クラブ)

モザイク事件帳 (創元クライム・クラブ)






『モザイク探偵』



再び泰三ー。


本作は連作ミステリ。


一癖も二癖もある探偵たちが様々な種類の事件を解決する、故に寄木細工――モザイクであると。


イカレタ博士に殺人者、挙句の果てに記憶喪失患者まで探偵として駆り出されるんだからもはや何でもありだなー。


この作品の面白いところは、一つ一つのミステリに対して、最初からその種類が明示されていること。


“犯人当て”とか“倒叙”とか“安楽椅子”とか“バカ”とか“日常”とか“SF”とか……。


『タイトル (犯人当て)』みたいにね。




更新世の殺人 (バカミス)』



バカミスって初めて読んだ気がするけど、面白いなー。いや、これは予め“バカミス”という括りですよーと言われて読んでいるからなのか。


世に言うバカミスって普通、読者が下す評価だもんね。作者は至って真面目に“ミステリ”やってるつもりだけど、


読んだ人達が「このトリックはねーよwwwバーカwww」って言うからその作品に“バカミス”のレッテルが貼られると。


けどここに載ってる『更新世の殺人 (バカミス)』は“バカミス”を書くという前提で書かれているから(多分)、所謂“バカミス的要素”を内包して書かれているから、


その要素が話に上手く馴染んで、何だかんだで無理のない出来になっているのかなーと、面白いと思ったのはそういうことなのかも。


普段ハズレのないミステリ作家を集めて、敢えてバカミスを前提に書いてもらったミステリアンソロとかあったら興味深いし読みたいなー。




『氷橋 (倒叙ミステリ)』



古畑任三郎』みたいなのは“倒叙ミステリ”と呼ぶのか、恥ずかしながら初めて知った。


古畑任三郎にも角砂糖を使って似たようなトリックがあったな。藤原達也と○○のやつ、三夜連続でやったFINALの一日目。


聡明な読者ならタイトルだけでトリックが読めてしまうような話だった。




連作短編なので同一人物が違う立場で登場したり、前の話で探偵をやった奴が名前だけで登場していたりした。そういうの結構好き。






雲 Tokyo SKY Symphony

雲 Tokyo SKY Symphony






雲。


写真集。


雲って自然現象の中では、最も変化に富んだ被写体だよなー。撮ってて楽しそう。


眺め終えて、pillowsの『RUNNER'S HIGH』と『雨上がりに見た幻』『ハイブリッドレインボウ』が聴きたくなった。