書籍紹介



黒と愛 (ハヤカワ・ミステリワールド)

黒と愛 (ハヤカワ・ミステリワールド)






1998年『殉教カテリナ車輪』で第9回鮎川哲也賞を受賞しデビューした飛鳥部勝則の……何作目だろう、分からない。


最近友人がご執心らしく薦められたので読んでみた。



一言で言えば“幻想ホラーミステリー”って感じかな。いや、この言葉が頭悪いのは分かってるんだけど。ジャンル分けをするとしたらね。


近い作家を挙げるとしたら、真っ先に思い浮かぶのはやはり江戸川乱歩か。


ヒロイン(漫画脳だな)である示門黒に対する狂気(黒)の先に見える愛、それは俗っぽく言えば変態的な愛と代えられる。


舞台も、血と臓物と腐肉が主題の絵画が集う奇妙に傾く狂気の城――奇傾城。


そしてその城の主が先祖代々改造人間を作り続けるマッドサイエンティスト


うん、非常に乱歩乱歩してるな。


そこにメインである首切り密室殺人まで加わるから三百数頁なのに読んでいて感じるボリュームがハンパない。



でもミステリーとしての出来はどうなんだろう。


ロジックについては何も言えないから何も言わないけど、その名前は……『レベルE』と同じパターンじゃないかーって思った。


皆の狂気の対象である示門黒を肉体的に最後まで生かしたのは、作者自身も彼女に狂い、また愛を感じていたからかな。





夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)






米澤穂信の<小市民シリーズ>第2段。季節は夏。テーマはスイーツ。ってこれは前回もそうだったか。



相変わらず小鳩くんの小市民を目指す姿勢が口ばかりで、自ら積極的に事件に関わって行こうとする様に好感が持てる。


と思ったら本作の最後でキッチリ小佐内さんにその事を指摘されてて小鳩くん涙目ざまぁwww


まあ「やれやれ仕方ない」なんてセリフ吐こうモンならボクを含めた読者たちが小鳩くんを殺すだろうから、そういうことなら小佐内さんに言葉責めでイカされたほうが嬉しいよね。


中身に関しては、あとがきでも書かれてたけど、短編エピソードが長編としての物語の流れを生む構図が前作『春期限定〜』よりも色濃く出ており、


より長編ミステリ然とした出来に仕上がっていた。


やっぱりあとがきはちゃんと知識のあるプロに書かせなアカンね。


『春期限定〜』のあとがきはどこの馬の骨とも分からん奴の頭の悪い文章だったから、本編を読み終えたあと激萎えしたんだよなー。





ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ






森見すっげー久々。いつ以来か調べてみたら2010年8月28日に読んだ『有頂天家族』以来だった。



あらすじを読んだ瞬間、多くの読者が思ったこと、それは「ついに森見が京都を脱出した! 主人公は偏屈な大学生ではなく頭の良い小学生だと?!」だろう。


しかし随所に見られる森見節(つーかおっぱい)は健在で、何だかんだで長編森見作品を全制覇している自分は嬉しかったり呆れたり……。


本作が2010年のSF大賞に選ばれたときは、「森見がSFって、まあこういうランキングは適当だからなー」なんて思ってたけど、いざ読んでみたらなるほど、これは確かにSFだ。


何処からともなく町に現れた大量のペンギンたち、そしてそのペンギンを作り出すことができる謎の歯科医院のお姉さん、また時を同じくして森の奥の草原に現れた謎の球体“海”。


これらの因果関係を主人公であるアオヤマ少年が町を東奔西“歩”しつつ解明していくのが本作『ペンギンハイウェイ』である。



作中でアオヤマ少年は自らが歩いた道をオリジナルの地図に記し、そこで見たこと聞いたこと感じた事をノートに逐一まとめる習慣を持っていた。


その姿はさながら親ペンギンに教わったことをしっかり忘れずに真似をする小ペンギンのようで、


もしかしたらペンギンハイウェイとは、ペンギンのやってきた道だけでなく、作中でアオヤマ少年が歩いてきた道のことも示しているのかもしれない。










すっかりお馴染みの国内SFアンソロジー ノヴァシリーズ。




北野勇作 『社員食堂の恐怖』



最後まで敵の正体が分からない、ハリウッド系不条理ホラー。





竹本健治 『瑠璃と紅玉の女王』


大人のための残酷メルヘン。短いページ数なのに完成度高し。




森田季節 『赤い森』


考古学SF。古墳の知識凄い ラノベ畑で活躍かー。調べてみるかな。




他色々。疲れたー。






告白

告白






倫理観やら葛藤やら、ありとあらゆる子供達の“心”を茶化しておきながら、


「堕胎は殺人です」ということだけははっきりと言い放った森口先生を見ると、作者が本当に言いたかったことはそれだけなんじゃないかって気がしてくる。