なぜピクミンのクリア実績は就職活動のエントリーシートに書けるのか
「ピクミン」というタイトルのゲームがある。2001年『僕たちピクミン〜♪』のCMソングで一世を風靡したあのゲームだ。
先日、日々のストレスで全身に滾る破壊衝動を抑えるべく、地元の「ゲオ」にて1500円で購入してきた。
ゲームの詳細なんかはウィキペディアの説明によるが、簡単な概要を説明すると、
プレーヤーは主人公であるキャプテンオリマーを介して愛くるしい姿のピクミンたちを操り、30日の期間内にロケットの部品を30個集める、という内容である。
操れるピクミンの種類は、赤ピクミン、黄ピクミン、青ピクミン、の三種類でそれぞれ固有の特徴を持っており、
赤ピクミンは『力が強く、火に強い』 黄ピクミンは『爆弾を使用でき、ジャンプ力が高い』 青ピクミンは『水中歩行が可能』 といった按配である。
画面上で一度に操作できるピクミンは100体が限度なので、上で挙げた三種類のピクミンをどのような内分けで操作するかがゲームの肝となってくるのだ。
ということで早速プレイしてみた。
とりあえず30日で30個なのだから1日1個のペースでGETして行けば間に合うだろうという、私の人生と同じギリギリchopな計画で進めることに。
プレイを始めてまず最初に登場したのは赤ピクミンだ。
拡大すると気持ち悪いな。初日はこの赤ピクミンの数を増やし、“メインエンジン”1つを取った時点で1日が強制終了されてしまった。
↑このように、部品ごとで必要なピクミンの数が違うのだ。上記の“メインエンジン”の場合は20匹のピクミンが必要ということ(ピクミンの種類は問われない)
とまあここから、2日目、3日目〜30日目までの軌跡を画像付きで書いていくと、私が面倒臭いというかそれはもうタダのゲーム日誌で全然趣旨が違うじゃねーかということなので割愛するが、
結果、私は30個の部品全てを25日間で集めきることに成功した。
当初の綱渡り計画の予定が5日も早まったのは、単純な話、1日に1つ以上、調子の良いときは3つもの数、部品を集められたからに他ならない。
ここで少し、私の1日毎のゲームの進め方について紹介しておこう。
ゲームが始まるとまず私は、キャプテンオリマーだけを操作して、フィールド上に点在する各部品の場所を見て回ることにした(MAPあり)
そうすることで「この部品は水の中にあるから青ピクミンが必要だな」とか「これは高い場所だから黄色だ」などと獲得の目星が付けられるのである。
中には「まず高いところから下ろすために黄ピクミン、そのあと炎の中は赤ピクミンに任せて、最後水の中は青ピクミンに運んでもらおう」という、
手に入れるためにかなりの苦労を要する部品もあり、場合によっては『1日1つ』のノルマが達成できない日もあった。
そしてある程度の確認が終わり部品獲得までのビジョンが整ったら、一度リセットをしてゲームを再開するのである。
リセットは邪道だー、と思う人がいるかもしれないが、私はストレス発散のためにゲームしているので、そんなクソくらえな束縛に耳を貸す必要はないのである。
大体、人生にリセットボタンがないのだから、せめてゲームぐらいリセットしても良いではないかーというのが私の常々からの持論なのである。
んで、ここからが本題。
そんなこんなである種、強くてニューゲーム的な状態でこの「ピクミン」をクリアをした私だったのだが、
コントローラーを置いてWiiの電源を落とそうとしたとき、ある疑問が頭の中を過ぎった。
(このゲーム、ネット上に生息するキチガイみたいなゲームオタクたちは一体どれくらいのスピードでクリアしているのだろう)
今回は少々正道から外れた――あくまで邪道ではない――やり方で初プレイをして25日でクリアしたわけだが、それでも『1日2つ』もアイテムが取れていない計算なのだ(見りゃ分かる)
ネットのゲーオタならまあ『1日2つ』15日クリアは堅いだろう、そう思って調べてみた↓
http://www.s4r.org/gs/game/pikmin/process.html
9日……だと……。
9日……だと……。
30個を9日、つまりは単純計算で『1日平均3〜4つ』
「――化物か」(発症)
いや、9日という結果も凄いけど、それ以上に目を見張るのは、その結果を出すための各日の行動プロセスだろう。
以下2日目から抜粋。
・25匹全員を出し、1匹だけそばの赤ペレット草に投げ、残りで土門を破壊させる。ペレット回収役の1匹には、そのまま近くにある黄ペレット草も回収させる。これで生まれた3匹と共に土門の作業に合流。
・外に出て、小チャッピー4匹を掃討。地面の10ペレットと高台の5ペレットも同時に回収。1匹余るはずなので、小チャッピーが赤ペレットを出せばそれを、無ければペレット草から赤ペレットを取得して持ち帰らせる。これで61匹に。全員をさっさと引き抜き、近くの草むらで大地のエキスを出し、なるべく全員を花に育てておく。
・永久燃料ダイナモはひとまず無視して、そばのチャッピーを全員で総攻撃。死体および近くに落ちている赤ペレット(1)を11匹で持ち帰らせ、そばの土門を残り全員で開けさせておく。持ち帰ったら、出てきた芽は無視してそのまま全員で土門まで戻り、土門破壊に参加させる。その向こうの小チャッピー&チャッピーも同様に秒殺。死体処置は保留。
・赤ピクミンを邪魔にならない所に固めて解散しておき、黄オニヨンをゲット。近くの黄ペレット5つと小チャッピーを使って黄ピクミンを15匹まで増やす。ペレット輸送中の待ち時間に、黄オニヨンそばの白い石門を、目の前にある爆弾3つで破壊。
・近くの缶2つの中にある爆弾11個を回収。黄オニヨンのあたりで解散。ここらへんで正午。
・手ぶらの黄ピクミン4匹だけを連れて、気まぐれなレーダーに投げつける。オリマー氏ひとりになったら、周辺にいるオスウジンコ4匹をオリマーパンチで始末に行く。
・赤ピクミン全員を連れてきて、気まぐれなレーダーに16匹を投げつけ、輸送を開始させる。残り全員で、周辺の小チャッピーとメスウジンコを全滅させる。その最中に、オスウジンコ4匹の死体を赤1匹ずつで持ち帰らせておく。他の獲物を持ち帰ろうとしたら呼び戻す。終わったら、黒い石門のそばで待機(41匹残るはず)。
・爆弾ピクミン全員を連れてきて、先にある黒い石門へ。黒い石門を爆弾9個で破壊。2個残るがこれは温存。手ぶらの全員(50匹ちょうど(+爆弾2匹)残っているはず)でただものではないネジを回収。持ち帰れば赤ピクミンの総数が87になり、地上にいる総数が100に達する。※赤&爆弾ピクミン全員をいっぺんに連れて行けばより効率的だが、誤爆等の危険性がある。
・パーツ2つと獲物の回収が済み、埋まっている赤ピクミンを抜き、スタート地点に100匹揃ったところで、もうひとつの草むらを使ってできるだけ多くのピクミンを花にする。残しておいた爆弾2つは、ここにある白い石門に使っておく。破壊しきれないが、これはまた次の機会に。
・100匹全員でまた外へ。黄ピクミン全員を含めた40匹で、放置していた永久燃料ダイナモを回収。
・残り60匹でショックアブゾーバーの回収に向かう。そばのチャッピーを始末してからショックアブゾーバーを50匹で輸送。まだ10匹余るので、チャッピーを持ち帰ってもよい。パーツ総数が5つになり、宇宙船がパワーアップ。最低限の作業完了。
もう何だろう、一匹単位で行動を指示していやがりますよ、この化物。
それだけじゃない。本来ピクミンを操ることに終始するはずのキャプテンオリマー氏まで作戦の糧にするその周到さというか貪欲さ、僕は敬意を表する!
いやーにしても、複数のピクミングループを同時進行で動かすだけでも凄いのに、『ここらへんで正午』とかしっかり時間まで計算してんのはブッたまげるな。
私は基本猪突猛進で、一つのアイテムを取るためにピク員を全てつぎ込むスタイルだったから時間を無駄にしまくりだったわけだー。
と今更になって感心したとき、私はこの「ピクミン」というゲームの本質に触れた気がした。
もしかしてこの「ピクミン」というゲームは、『企業に於ける企画統轄シミュレーションゲーム』なのでは、と。
実際に動くピクミンたちを社員に置き換え、指示を出すオリマー氏=あなた=企画責任者(リーダー) と考える。
企画目標は当然「方々に散ったロケットの部品30個を、30日という期限内に取引先へ納品すること」である。
人には皆、得て不得手がある通り、指示を出すあなたは社員たちを適材適所に配置しなければならないし、
トラブルが発生したときはあなた自らが現場へ赴き、問題解決に東奔西走を強いられる。
場合によっては様々な能力を持った社員が協力しなければ達成できない仕事もあったり、社員が思うように動いてくれないこともあるだろう。
そして、時には苦渋の決断を迫られることも……。(上の最速クリアの手順には書かれていないが「ピクミン」では安全に部品を運ぶために他のピクミンを囮に使うことがあるのだ。囮に使われたピクミンは敵の腹に収まり非業の死を遂げる。その姿は宛ら会社を守るために行われる“リストラ”の様で――)
ここで思い出して欲しい。
このゲーム「ピクミン」のテーマソングである「ピクミン愛の歌」の歌詞を。
『ボクたちピクミン あなただけについていく 今日も運ぶ、戦う、増える、そして食べられる』
そう、なんともサラリーマンの哀愁が漂う歌詞なのである。
このピクミン=サラリーマンの哀愁という認識は、ソフト発売当時、有名サイトZAKZAKの記事でも取り挙げられている。↓
っとリンク切れなのでやっぱりコチラ→ピ●ミン
ここまで提示されたら「ピクミン」の本質=『企業に於ける企画統轄シミュレーションゲーム』という私の考えも全くの的外れではないと納得していただけるだろう。
では、その事実を少し飛躍させて就職活動のエントリーシートに当てはめてみる。
就活定番のアピール文句にこういうのがある。
『学生時代はサークル長を務め、皆の上に立ってリーダーシップを発揮してきました。』
もはや定番過ぎて面接官には呆れられるとすら言われている(?)この一言。
と言うのも、この“リーダーシップ”の具体的な内容を指し示すところの大部分が、
飲み会のセッティング、文化祭の出し物の申し込み、合宿という名の旅行という名の麻雀大会の取り決め……etcに終始しているからなのだ。
てめーそれただのパシリやないかー!と、人事部の面接官殿はツッコミたくなっちゃうわけだ。
企業の求めるリーダーシップとは、人の上に立って動く人間ではなく「人の上に立って“動かす”人間」なのであり、その認識をごまかす奴は生涯地を這うとはいかないまでも、
エントリーシートで弾かれるという憂き目を見るのである。
しかしピクミンのクリア実績ではどうだろう。本質が『企業に於ける企画統轄シミュレーションゲーム』である「ピクミン」のクリア実績では。
『赤ピクミン、黄ピクミン、青ピクミンの三種類の特性を瞬時に見極め、適当な数を適所に配置、指示を出しミッション成功に努めました。トラブルが起きたときは自らが現場へ行き解決に尽力しました。クリア日数は8日で、おそらく日本最速だと自負しております。』
おお、なんかすごい就活に対する意識の高い学生っぽいではないか!
しかしこれは、採用側が「ピクミン」の本質を理解していなければ成立しないアピールである。
ということで私は、企業人事部の皆さんには「ピクミン」を勉強して頂き、エントリーシートにクリア実績の記載を義務付けることを提案する次第である。
学生の皆さんも試行錯誤を繰り返してとにかく早く、そして出来るだけ犠牲を少なく、「ピクミン」をクリアできるよう努力をして欲しい。
以上、この提案が、昨今の閉塞感漂う日本の就活事情に一石を投じる結果となれば、私としてはそれほど嬉しいことはない。
そして『今日も運ぶ、戦う、増える、そして食べられる』だけのピクミンたちに幸あらん事を、私はこれからも切に願っている。 (平成23年12月某日 東京都の自宅 暖かいお布団の中で)